エムズテニス便り

2008年05月23日第35話 2008年5月23日(金)

こんにちは。(有)エムズテニスパークの鈴木です。
第35話の今回も海外のテニスコーチについて書きたいと思います。今回取り上げるのはブラッド・ギルバート。皆さん聞いたことはありますか?現在では多く のプロ選手を育てたコーチとして有名な方なのですが、もともとは世界ランキング最高4位という名選手でした。この方について少し詳しく書きたいと思いま す。

「ギルバート。お前には俺と同じコートに立つ資格なんてないんだよ!お前は最低だ!最低最悪だ!」こう言ったのは有名なジョン・マッケンロー。 1986年12月13日、ナビスコマスターズ(現在のATP選手権。年間ランキング上位16名で戦う王者決定戦)での言葉でした。マッケンローはナビスコ マスターズ前年度王者であり当事世界ランキング2位。地位・名誉・人気があり、マッケンローのファンは全世界に多数いました(実は私も好きでした)。その マッケンローがこの試合で対戦していたのがブラッド・ギルバートです。そしてマッケンローが負けそうになった時、ギルバートに対してエンドチェンジですれ 違う時に言った言葉が上記の言葉です。その後、マッケンローはますます不調となり、ラインジャッジの機械に文句をつけ、第2セット中には観客にまで言いが かりをつけます。その上、わいせつなジェスチャーをしたとして主審から警告を受け、その警告に対して大声で怒鳴り、ラケットを投げつけ、自分のファンまで もののしりだします。そして、その試合に負けたあと、マッケンローは「あんなやつに負けるようになったのでは、プレーすることについてもう一度考えなけれ ばならない」という言葉を残し27歳で引退します。ではなぜ、マッケンローはこのような暴言を吐いたのでしょうか。

もう一つエピソードを書きます。89年のフレンチオープン準決勝で、足に痙攣を起こしたマイケル・チャンは対戦相手のイワン・レンドルに対してアン ダーサーブを打ったことは有名ですよね。その試合を見てマッケンローは「チャンはそこまでして勝ちたいのか。テニスプレーヤーとして見苦しい」と言ってい ます。それに対してギルバートは「どこが見苦しいのだろう。そこまでして勝ちたいかって?勝ちたいに決まっているじゃないか!少しでも勝つチャンスを見出 せるなら、アンダーサーブだろうが何だろうが使って当然だ。私に言わせれば審判に向かって怒鳴りちらすほうがよっぽど見苦しい」と著書に書いています。こ のエピソードからもわかるように、彼は勝つことに対して他の誰より貪欲です。そしてその貪欲さがジョン・マッケンロー、ジミー・コナーズ、ボリス・ベッ カー、マイケル・チャンなどの名選手に勝つ秘訣だったのです。

ではギルバートの考えについて簡単にまとめます。
頭を使った選手が勝つのは当たり前。
ただの努力家は頭が空っぽ。
心の準備が勝負を決める。
技術的・心理的な戦略が勝利への道しるべとなる。
などです。彼は試合の前にあらゆる情報を得ています。そして対戦相手に対して有効な手立てを常に考えています。準備が好きで最も大事だということを実践し、そして勝利を得ていたのです。その理論はコーチとして指導したアンドレ・アガシなどに受け継がれています。

戦略と戦術を駆使して“卑怯者”と罵られても試合に勝つ方法を見つけ出し、ニューヨークタイムズ紙に「相手を調子悪くさせるのが実にうまい男」と書 かれ、故アーサー・アッシュ氏(黒人初のウィンブルドンチャンピン)に「ブラッドはこれといってすばらしいストロークを持っているわけではない」と言われ ても勝利を得る彼の理論は非常に興味深いものです。「困ったらギルバート」と呼ばれるくらいプロ選手から慕われています。

勝負は試合の前から始まっている!!ですね。

それでは次回をお楽しみに。

<お知らせ>
・5月23日(金)及び24日(土)はスクール休講です。
・5月24日(土)に吉田友佳プロのテニスクリニックを開催します。
・5月25日(日)より第53期の優先継続週です。

 

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